「お前の魅力はなんだ?」


ジャニーズのアイドル。
イコール、かつては歌って踊る甘いマスクの持ち主だった。いまはそれだけに留まらず、SMAPがバラエティの扉を開き、中居正広が司会者の扉を開き、TOKIOが肉体派と農家の扉を開き、櫻井翔がラップと報道キャスターの扉を開き、大野智が芸術作品個展の扉を開き、岡田准一が大河ドラマ主演の扉を開いてきた。小説家の扉を開いたのは加藤シゲアキ(NEWS)だった。

先人たちの扉を開くモチベーションは、生き残る居場所を得るためのサバイバル合戦だったり、勝ち取ったステップアップだったり、「ジャニーズ」だからって男になめられたくない、などそれぞれに様々な想いがあるのだろう。加藤さん曰く「自分がなにか動くことで、NEWSの活動に還元したい」その祈りにも似た強い想いが、彼を小説家たらしめた。その祈りは一度崩壊した後に、再び、より頑丈に構築された。

加藤さんを構成する要素には、明らかにされているだけでも、ひとりっこ/ジャニーズ/職業がアイドル/NEWSのメンバー/小説家/しゃがれ声/中学受験/青山学院大学卒/ラジオ/タマフル/雑誌連載/音楽/映画/美術/写真/料理/梅干し/釣り/金魚/カラオケ、などがある。とにかく多趣味。
今回この記事を書くにあたって、音楽だいすきクラブという合同ブログでアイドル特集があり、そちらに加藤さんの小説「閃光スクランブル」をきっかけにNEWSにはまったことを書きました。こちらはその関連記事という位置づけ。むしろ加藤さんがサブカル趣味の人に見つかって欲しいという思いだけの記事。ここでは大きく2つ、彼の小説と彼の好きな音楽について取り上げる。

加藤シゲアキを一言で表すなら、負けを知ってるこじらせアイドル。ほんっと最高。



★初稿時(2014/12/23)より情報等の加筆・修正を行いました(2015/08/20)




最初に加藤さんの姿を認識したのは、2012年2月ごろに本屋で見た、小説「ピンクとグレー」 のポスターだった。NEWSはデビューの頃から普通に知ってたにもかかわらず「あれ?こんなイケメンいたっけ?」笑。でも名前を見てもピンとこず、そこまで強い興味もまだなかったので「イケメン」のことはそのまましばらく忘れてしまった。じつはその「影の薄さ」は加藤さん自身がそう仕向けたものだった。小説を書き始めるまでを簡単にまとめると、Jr.時代はエリート→デビューにあたってメンバー内に巨大な壁が現れエリート挫折→グループ内ではメンバーを輝かせるための影に徹しようって思っていた、とは本人の談。その頃はまったく知らないけど、これエピソードだけで泣けませんか…。目立ちたがり屋で負けず嫌いがなるであろうアイドルという職業、じつはこんなことを色んなグループの誰かが考えてたりするのかなあ、なんて想像させられてしまう。かつてはそういうことを思っていた加藤さんが「俺もなにか個人で活躍して、グループの認知に還元したい」と奮起して新たに着手したことが、小説だった。

彼の小説には、純文学かと見紛うような、いや、見間違いじゃなく、想像を遥かに超える純文学然とした静謐な筆致がある。温度や空気感や光の濃淡を鮮やかに描写する鋭い観察眼や、張り巡らされた糸を丁寧に回収する本格的な構成力がある。誠実さとだらしなさがきちんと存在しており、人間らしい泥臭さがある。
思春期を渋谷と芸能界で過ごした加藤さんは、2012年から1年に1冊のペースで、渋谷サーガとして括られている3部作を刊行した。デビュー作『ピンクとグレー』は胸の奥のかさぶたを刺激する、いたずらな運命のストーリー。『閃光スクランブル』はゼロ知識で読んでもおもしろい、トップ女性アイドルをめぐるザッツエンターテイメント。『Burn.‐バーン‐』は過去と現在が交差する、怒りと再生の物語。
とりわけわたしがファンになったきっかけでもある「閃光スクランブル」は女性アイドルの成長が描かれており、最後に描かれる自分の影との対話シーンには、いまではどうにもグッときてしまう。さらにクライマックスシーンでは、初見にも関わらず、文章を読みながら、映像が文章を先回りして脳内で上映されるという稀有な体験をし(いつもは読み終わった箇所しか映像にならない)もう、これは、困ったものを知ってしまったぞ、という気持ちになった。排斥される側の孤独と怒りを見事なまでに表現してくれた「Burn. -バーン-」が上梓されたのは2014年2月。
それ以来、短編小説を次々と発表し、短期連載作品を含む5本プラス書き下ろし1本が収録された『傘を持たない蟻たちは』が2015年6月に刊行された。個人的には『染色』と、書き下ろしの『にべもなく、よるべもなく』が堪らなく好みである。他のそれぞれの作品にもそれぞれの葛藤ややるせなさ、惨めさが容赦なく描かれており、このたかが1冊の読後には、自分の中に存在し続ける埋まらない空っぽを直視せざるを得なくなる。アイドル活動も追いかけるファンとしては、どこにこんな時間があるのかと驚くぐらいのペースと熱と、アイドル活動からは垣間見ることさえも許されない一人の青年の鬱屈の深さに、いちいち戦慄しては震える。だけどそれでいて、どれも心地よく納得のいく表現の海が広がっているので、作家としての加藤さんへの信頼度は高まるばかりである。これからも楽しみに作品を待ちたい。


小説とは別に、素の魅力が詰まっているのは、fm yokohamaで毎週日曜23時から放送されているラジオ「SORASHIGE BOOK」。通称「シゲ部」。全国からもラジオアプリで聞ける。30分間ひとりで喋り続けるんだけど、だいたい途中でマイワールドに突入してはしばらく戻ってこない。すっごく楽しそうに、あなた以外にそこに興味ある人少ないんじゃない?というピンポイントなことを延々早口で熱弁しては「ああまた時間なくなっちゃった…」と落胆する。超ひとりっこ。笑
このラジオの心臓部とも言えるコーナーが、多趣味な人ならではの音楽部と映画部。なかでも音楽部は、名前からの想像どおり毎週オススメや気になった曲をかけてくれる。選曲は、まあ、ただのサブカル!というか、ただの音楽好き!ジャンルも洋邦問わずポップス、ロック、オールディーズ、EDM、ジャズと縦横無尽。しかも、ラジオを聴いている自分のファンにもわかるようにプチ解説(そのアーティストについて、その人がその作品を作ったエピソードetc.)と自分の感想を喋った後に曲を流してくれる。その感想が全部自分の言葉で喋っていて、加藤さんははこう感じたんだなあということが興味深く味わえてファンにも好評なので、いくつか紹介します。(下記に取り上げたのは括りが似てるじゃんと思われるかも知れないけど、わたしの趣味で話がおもしろかったものを選んだのでご了承ください)

THE HIATUS「SOMETHING EVER AFTER(2014/5/11 OA)
「今週はもう何回もかけてるし説明は不要かな〜と思うんですけど、ザ・ハイエイタスかけたいと思います。アルバムが出ましてですね、今回もいい、良いアルバムです。ちょっともう僕の場合盲目的に好きなところがありますけど、年々洗練されて、綺麗になっていく印象ですね。言葉選びとかもどんどん詩的になっていく、叙情詩的になってるんじゃないのかな。ご本人も”歪なことをやりたかったはずなのに大人になってきた"っておっしゃってましたけど。本当かっこいいなあ、自分もそうありたいと思いますけども、ねえ!がっつりとしたアルバムも2年4ヶ月ぶりで、ずうっと聴いていられるアルバムで。全然聴き飽きない、いつも聴き飽きたりなんかしないですけど!どんどん美しくなってるような。シンセとか。細美さんが個人でDJやったりしてる部分も(影響が)あるのかな?だんだんこうバンドサウンドとは一口で括れなくなってきているとは前も話しましたが。エモい感じもありますし、また一つ新しい境地に行ったなあなんて、偉そうですけど思ったりしました。素晴らしい歌い手として尊敬しておりますし、楽屋なんかで筋トレしてるときに久々にエルレかけると懐かしいなあ!!と思うし、どんな細美さんも大好きですけども、今回も素晴らしいアルバムだったのでその中から1曲かけたいと思います!」 

坂本慎太郎「ナマで踊ろう(2014/6/22 OA)
「これはかけなきゃだめかなあ〜という‥。すごかったんですよ!各所で話題になってたというか、音楽評論家の方々が”とんでもねえぞ"ということで。坂本慎太郎さんなんですけど。みんなが”すごい"っていう言うから気になるじゃん!前の作品も相当”やべえ"って言われてたんだけど、わからなかったんですよ!あ、坂本慎太郎さんの説明をしなきゃいけないですね、ゆらゆら帝国のボーカルなんですけど、サイケデリックロックというか。わかりやすくないロックっていうのは何回か聞かないとわからない、好きになれなかったりするんですけど、だけど、好きになりたいんですよ。(説明)心して、聴いたんですよ。やっぱりすごかったんですよ!ん〜〜コンセプチュアルで全体的な世界観で出来上がってて緻密な感じがするんだけど。テーマが”人類が絶滅したあとの世界”らしくて、SF的というか、未来から見た今を見たら過去って感じ。未来から今を見てたりする。それは地続きな地獄、でも僕らはそれに気付かないふりをしてるよね的な虚無感。空恐ろしかったりする、でもなんか聞いちゃう!ぶったまげるぜ!!みたいな。いや〜〜〜でももう言葉で説明するの野暮だなあ。聞いてもらおうかな!ライブする気ないんだろうな〜って感じする。ナマで踊ろうって言ってんのにね!興味ある人はぜひアルバムで」

きのこ帝国「クロノスタシス(2014/11/2 OA)
「今週はきのこ帝国っていうバンドを。先週ですね、アルバムを出したばかりの。まだアルバムは聴けてないんですが先行でMVがネットに上がってまして、その曲がね、すごい良かったんですよ。きのこ帝国は前から知ってはいたんですけど、なかなかかけるタイミングがかったんですけど、まあ9月に”東京”っていう歌が出て、からの”クロノスタシス”が出て、今回かけたいのは"クロノスタシス”なんですけど、この2つが入ったアルバム。”東京”はすごいな、いいな!って思ったんですけど、”クロノスタシス"はもう、本当にすごいな…!って思いました。構成とか演奏とか。本当に音数がとくに多くなく、繊細っていうのが僕の印象。(説明)ライブ行ってみたいなと思いました。”クロノスタシス"っていう意味が、歌詞にも出てくるんだけど、時計が一瞬止まって見えるっていう現象、錯覚なんですって。歌詞も”クロノスタシスって知ってる?””知らない”みたいな。自分に重ねるのも変ですけど、"ピンクとグレー”で書いた”ファレノプシス”っていう、歌詞だけ載っけた歌があるんですけど、なんとなく自分の作品を連想してしまいましたけどね。きっとこういう歌なんだろうな、あの子たちがやってるのは…いやまあ(あっちは)書いたの僕なんですけど。本当にすごい、すごいMVも素敵だし、これから本当に今後目が離せない…いやまあ十分認知されてるとは思うんですけど、目が離せないバンドだな、ガツンときちゃったよ、と思いました。僕の好きな音が詰まってる1曲なので、ぜひ聴いて欲しいと思います!」


これ、音楽番組じゃないんだよ。アイドルのラジオ。さらに驚きなのは、収録にもかかわらずとにかく耳が早い。こんなふうに好きな音楽を、自分の感覚で自分の言葉で語ってくれる20代男子、普通に友達になりたい笑。曲の感想はラジオ音源や書き起こしブログを地道に辿るしかないけれど、曲目はラジオの公式ブログに書かれてるので探してみてください。まあ地道に辿ってみるという点では同じだけれど笑、放送開始前の2011年6月まで遡れました。

 
映画部も同様のスタンス、町山智浩氏が神でタマフル育ちだそう。そんな宇田丸さんから「ジャニーズの信頼できるアイツこと、加藤シゲアキさん」という紹介を経て、宇田丸のウィークエンドシャッフルで2014年映画ベスト5が発表された。5位「ダラス・バイヤーズクラブ」4位「複製された男」3位「アデル、ブルーは熱い色」2位「ジャージー・ボーイズ」1位「FORMA」(2014/12/13 OA)。けどこれ全部「試写会とかどうやったら誘ってもらえるのかわかんないから普通にチケット買って映画館で見てる」らしい。うん、ジャニーズだよね?と確認したくなるのはわたしだけだろうか。
毎週土曜2時間生放送の、ガレッジセールのゴリさんと2人でMCをしているNHK第一「らじらー!サタデー」や、ダイノジ大谷さんとのボンクラな関係性もおもしろいので、是非機会があればほかのラジオも聞いてみてねー!ちなみにテレビは、NEWSの新レギュラー番組を乞うご期待(超絶希望)…☆

おまけ『ピンクとグレー』にまつわる映画セレクション(「Spoon.別冊」2012年2月号)
「マグノリア」ポール・トーマス・アンダーソン
「パンチドランク・ラブ」ポール・トーマス・アンダーソン
「スタンド・バイ・ミー」ロブ・ライナー
「パーフェクトブルー」今敏
「パプリカ」今敏
「ブラック・スワン」ダーレン・アロノフスキー
「(500)日のサマー」マーク・ウェブ
「アダプテーション」スパイク・ジョーンズ
「バンズ・ラビリンス」ギレルモ・デル・トロ
以上、「作品名」監督名


ここまで読んで興味を持ってくれた方には、やはりいずれコンサート映像も見て欲しいな…本業なので。

2012年夏コンサート
「もうダメかとおもった」と泣き崩れる、アイドルってこんなにも、自分の感情を素直に吐露してしまうものなの?というMC。新生NEWSとしてのツアー初日。涙なしに見られない「フルスイング」もここに収録。
 
2013年デビュー10周年コンサート
10周年記念に4人で歌を作って、"986(悔やむ)日々 だから今があった/やっと叶えた この4(し)あわせ”という歌詞を生み出した加藤さん。3時間強のただただ幸せな時間。



あとは、下記、個人的にこの流れを押さえておきたいと思う、主要インタビューの抜粋です。一部、要約したり中略部分を削ったりさせてもらっています。意味は変わらないと思うのでどうかお許しください。気になったら最下部のバックナンバーをどうぞポチってください。


1987〜2002(幼少期〜Jr.時代)
「さびしがりやでした」「幼稚園の頃からひとりで寝かせられて、それがすごいイヤで寝られなかった」「人との距離の取り方がわからなくていじめられたり虚勢はったり」「『タクシードライバー』みたいに鏡に向かって自分で自分にでケンカを売るんです。考えすぎちゃう。不器用でしたね」「小4の時に、母親がジャニーズ事務所の住所を調べてくれて、”履歴書"送ってみよう!」「経歴はエリートです、笑(中略)なんにもできないんですよ。歌もダンスもなんにも。なのにJr.で立ち位置はどんどんよくなるし、仕事がどんどん入ってくる。同期とは仲良かったですけど、当然、先輩の中には生意気だって言ってくる人もいました」「かわいがられる同期もいてうらやましかった。俺は先輩のこと好きだし、尊敬してたけど、態度ではあらわせなかった。かわいがってほしかったし、さびしかった」

2003(デビュー)
「芝居も歌も、年を取れば上手くなると思ってた」「でも、完全に違った。思い込みというか、そうであって欲しいと逃げてただけ。年のせいなんかじゃ、ごまかせないんだって」「デビュー直前に振付師さんに『お前は甘えてる、実力が追いついてない。今からでも外せるんだぞ。ひとりで残って練習しろ』ってはっきり言われた。鏡越しに着替えた山下くんとかが帰ってくのが見えて。時間が解決なんかしない。自分が頑張るかどうかなんだって圧倒的に気付いた」
ーデビューが決まったと同時に、挫折も感じた?
「うん。それでも、その不安を吹き飛ばすぐらいデビューできるってことがうれしくて、未来が輝いて見えた。だけど、輝いてたのは、未来じゃなくて俺以外のメンバーだった」「結成当初のNEWSは『人数が多くて、個々のキャラクターがかすむ』ってよく言われて。”間引くなら俺だろうな”と。俺は足を引っ張ってる。俺はなんて罪なことをしてんだろう、俺がいなければNEWSはもっと上にいけるはずって」「自分にできるのは、みんなが大変だと思うことを率先してやることだと思って、ある番組の出演者に挙手をした。マネージャーに”お前はいいよ"って笑われた。冗談とわかっていても、心はズッタズタでした。人が嫌がることですら必要とされてない。もう選ばれた自覚も責任もなくて、”俺、いらなくないか?"ってことばっかり考えちゃってた」「(そういう悩みは)誰にも相談できなかった。俺自身の問題だから。ついに自分を守ってた虚勢が全部はがれたなって思ってた」
ーどうやって立ち上がった?
「ファンレターを読んだ。こんなに気持ちを込めた手紙を、俺は書いたことなんてない。今まで俺を応援してくれた人は、ほかのメンバーよりは少ないかもしれない、でもゼロじゃない。少なくともゼロになるまではやろうって。誰に、何を思われても”この人たちのためにやるんでよくねーか?"って思えて、前に進めた」「最後に自分の気持ちにも耳を傾けた。”俺はここにいたいんだ”、”好きだからここに立ってるんだ"って気付きました。誰の意思でもない、自分自身がやりたいからやってるんだ」

2006(2度めの活動休止〜カウコン年明け後にグループとしてNEWS復活
「(年明け前)山下くんはソロ、錦戸くんは関ジャニ、テゴマス、俺と小山で”俺たちってなんもなくね?”。NEWSがどれだけ大事かよくわかったし、どれだけNEWSに甘えてるかもよくわかった。年越しのカウントダウンもふたりきりで控え室でジャンプして、ここにいるのと、ステージにいる差、階にしたらわずか1階の差だけど、圧倒的な差があるんだなって」

2007(悩む日々)
「頑張ろうと思ったのに頑張るための仕事が来なくなった。メンバーのがんばりを素直に喜べない時期もあった。なんで俺にはがんばる場すらないんだって。でも、どうやったら仕事が来るかわからない。」「NEWSのライブがあった時はめちゃめちゃ嬉しいのに、終わったあとの虚無感がすごかった」「ライブのMCとかも無茶なやつを全部俺に振ってくるわけ。だから、とにかくスムーズに進行することを優先。ダンスも歌も個性を出して目立つよりは、みんなに合わせることを考えちゃってた」「メンバーの前ではいじられキャラ、ドラマの役ではイケメンキャラ、そのギャップをどう区別していいのか人知れず悩んでいた」「最初は遊びまくってたけど、心の片隅で考えちゃうから楽しくない。本を読んだりドキュメンタリー番組を見たりしたけど、答えは見つからなかった」

2010(変わるきっかけ)
「A-Studioに二宮くんが出てた。”自分だけ仕事がなくて、メンバーはみんな頑張ってて、自分に何ができるだろう?って悩んでた”って、俺と同じ悩みを持ってたんだ。そのとき二宮くんは事務所に”オーディションをください"って頼みに行ったんだって。それで俺は、”考えるだけじゃ何も始まらない、大事なのは行動だ"って気付いた」「俺も行動に移そうって。手始めに事務所のえらい人に相談しようと思った」「厳しいことをいっぱい言われた。いちばんぐさっときたのは、『自分の魅力って何?』って聞かれた。答えられなかった。でも、答えられないから立ち止まってしまったんだってわかった」

2011冬(小説との出会いと、よぎる後ろ姿)
「”俺なんてだめだ”、”どうせだめだ”って思ってた。でも、まずは自分を好きになろう、自分で自分を殺さないようにしようって」「事務所に『何かやらせてください』って頼んでから何度も話し合った結果、チャンスをもらえたから、小説を書くことにした。締め切りを設定されたのは6週間後。いまは大変でも、これは自分のため、そしてグループのためになるはずと信じて書き続けた。結局その想いは届かなくて、本の発売少し前、人数が減ってしまったけどね(笑)」「事務所にNEWSの在り方を相談したときに、たとえばソロでCDを出すよりは、小説を書けるやつがいるっていうほうがNEWSのためになるんじゃないかなって言った。(自分の作品を世に出した)大野くんの背中が大きい。」
「”ここで変わらないと一生変われない”、そう思って書き始めた『ピンクとグレー』を進める途中に東日本大震災が起きて、”これを書いていていいのか?”とすごい葛藤があった。それでもどうにか3/31の締切日に原稿用紙300枚を書き上げて、6月に書籍化が決まった。書籍化を知らされた瞬間、”やった!”ってうれしくて声が出ちゃって。ただ同時に”間に合わなかったな”って想いもあって。(ーそれは?)なぜ、あのタイミングで僕は小説を書けたか。メンバーがいたからこそ書けた。書いているほとんどの時間、つらい。だけど、”NEWSのために何かしたい”っていうその一点だけが支えだった。うまくいかないことをまわりのせいにしてた時期で、だから、メンバーに何も還元できてないってコンプレックスがあったからがんばれたと思う」「もし僕が小説を書き上げたら、グループの未来を変えられるとも思ってた。僕が本を出版できれば”このグループにいたら、もっともっとおもしろいことが起こる”って思ってもらえるんじゃないかって。だけど、作業進行中にメンバーが抜けていく決定的な話し合いがあって…結局、僕は6人のためには何もできなかった。行動に移すのが遅かったのかなって、そこは今も後悔してる。6人のNEWSを守りたくて書いてたから」「会議室から出て行くふたりの後ろ姿、一生忘れない景色、一生忘れちゃいけない光景があるとしたら、あの二つの背中がそれだと思う。だって最後の瞬間だから、6人のNEWSが終わった瞬間だから」「背中を見ながら、自分がもっと頑張っていたらもっとメンバー同士をつなげられたんじゃないかなって後悔を感じた。一緒に8年やってきて”シゲがいるから”って引き止められる、そんな存在にはなれなかったんだなって」

2011夏(アイドルを見直す)

「(体を絞ったきっかけ)2年ぶりのライブで、2年で変わってないっていうことはダメかなあって。本を書くってことをやったりしてたけど。やっぱりふたりが抜けちゃった時、その”軸”を自分からやり直さなきゃいけないっていう。なんか”アイドル”をもう一回やり直す、みたいな感覚になって。2年っていう期間があって、一番変化が見えるのって、体が変わったっていう”見た目”。それはまずやらなきゃなあと思った」

2012春(小説家デビュー)
「アイドルがきちんとしていることが大前提」「事務所に相談していた時期は、自分に自信が持てなくて不安で、すごく卑屈な時期だったと振り返ってみてわかるんですけど、書いたことでそういうものが随分払拭されたと思います。歌もダンスも芝居も、もっと磨いていきたい」「書くことについては、僕が誠実でいれば問題ないと思っています」
「(ーアイドルの小説として色眼鏡で見られるであろうことに対して、まったく別のペンネームで書いたりしようとは?)それだと意味がないんです。全然。もちろん作品に自信も愛情もありますけど、正当な評価なんかよりも”NEWSの中に、こんなヤツがいる”って、NEWSに興味を持ってもらうことのほうが大事だから。本をきっかけにNEWSを、小山を、手越を、まっすーを知ってもらえることのほうが大切だから。名前をカタカナに変えたのだって、知ってもらうことを優先したかっただけ」

2012夏〜秋(新生NEWSとして)
「この4人でいられたらもういいから。俺はみんなを支えるし、受け止める。でも俺は俺で、やらなきゃいけないことめっちゃあるわ!と思って。目立ちたくない訳じゃなかったんだけど……ね?自分が目立たないことで、人が輝けばいいって…以前は思ってた。けどね、もうそうじゃない。それこそ自分から陽を浴びにいかなきゃダメだし。それもなんか楽しいなあと思えたの。今までそこを楽しくないって思ってる方が楽だったのかもしれない」「いろんなものを"捨てられた"って感覚に近いんだよね。小説がそうさせてくれたってのもあるし、名前の表記変えちゃったりしたことも俺にとってはすごく必要な作業で(注*2011年11月、本名の加藤成亮より表記変更)。とにかく変わりたかったんだよね、そのときは」「やっと、この5年ぐらい考え続けて悩んだものが全部捨てられたかな。今、こんな状況(4人)になって、ジャニーズに興味ない人から見ても結構面白いんじゃないかな、と。そこは胸張って”NEWS面白いですよ、おすすめです"って俺は今言えるかな。それまではさ、自分がNEWSに貢献できてない気持ちもあって”おすすめです”とは言えなかったんだよね。みんなは面白いんだけど俺がちょっと……というか。本も書けて結果こうなったけど、今は”これからNEWSは面白いよ!”って、”これからファンになればいいのに!"って凄く思うんだよね。あははは!ジャニーズに興味あるんだったら……NEWSを好きになったら楽しいよ!っていう気持ち。やっと、そう言えるかな」

2015夏(「世界はなんて優しい」)

「(ー仲間を思い小説を書き上げ、絶望を乗り越えたこと。あの頃の自分、ほめてあげたいんじゃない?)あの頃の自分に会えるなら、”がんばった分だけ認めてもらえるよ”って教えてあげたいかな。ハタチ前後の頃は”俺を取り巻く世界マジファック”とか”俺が受け入れられないのは世界がバカなんだ!”って、遅れてきた中2病が爆発してグチってばかりの毎日だった。一言でいいから伝えるなら、”意外と世界は、おまえに優しいよ”って」「小説に関しては、これがうまくいかなかったら死ぬんじゃないかなってぐらいがんばった。それが評価をしていただけた。誠実に何かをやったら、認めてもらえることもあるんだなってことが希望になった」
「(ー今日4年ぶりに会った瞬間、雰囲気が変わったなと思った)自信がついたかな。僕にもグループのためにできることがある。今は自信があるから、素直に謝れるし謙虚になれるんだなって思う(人って変われるんだね)きっと誰だって変われる。いつだって変われる。今は、そう思います」





主な参考文献
Myojo」2012年1月号/10000字ロングインタビュー「裸の時代〜僕がJr.だったころ〜」
ポポロ」2013年7月号/10周年記念インタビュー「僕とNEWS、10年間の心の軌跡」
spoon.別冊」2012年2月号/「ピンクとグレー」インタビュー
編集会議」2012年夏号/「ピンクとグレー」インタビュー
+act. Mini (プラスアクトミニ)」2012年 Vol.19/12000字インタビュー
Myojo」2015年7月号/10000字ロングインタビュー「STAND BY ME〜いつもそばにいてくれたね〜」



シゲ、いいよね。