2014年によく聴いたアルバム、ベストアルバムをまとめました。良いアルバムと好きなアルバムのふたつが並んだときは、良いアルバムはすでに誰かが選んでるだろうと踏んで好きなアルバムを優先にしています。こういう形で収まりました。相変わらずポップミュージックが大好きです。でも好きなポップがあれば、相容れないポップもあったりして。不思議ですね。
ばれないだろうけど1つだけ最近書いたばかりのレビューを再利用しましたすみませんえへへ。あと、スマホで見ると1つだけやたら大きなジャケットがあるけどPCからだと同じ大きさなの!Amazonにジャケ写がないのが悪いの!泣


それでは始めまーす!

2014年よく聴いた10曲はこちら 


10位/FOLKS『NEW TOWN』(2013) 
NEWTOWN

去年の作品だけどこれだけは。少し溝が開きかかっていた心の隙間に、Youtubeで見かけた「You’re right」がはまった。接着剤の代わりをしてくれた。「あなたはただしい」と念を押すように語りかけてくれる優しい音楽に感謝をしている。
光の三原色は、全ての色が重なると透明になる。FOLKSの音楽はそれと同じようだ。色んな音が鳴っているのに全てが乗ったレイヤーは透明で、まったく重くなく、それどころか浮遊感すら漂う。コーラスワークも多彩で、それぞれが絶妙のバランスを計算され奥行きのある響きを生んでいる。ジャンルはロックであるとも言えるしロックでないとも言える。1曲ごとに見せる表情が多国籍でもあり、無国籍でもある。何度聴いても空気の奥に新しい発見がある。
後から気付いたのだけれど、これがデビュー作だということが信じられない。それほどに完成されているし、次に鳴らされる音の重なりを早く聴いてみたい。


9位/THE NOVEMBERS『Rhapsody in Beauty』
Rhapsody in beauty 

美と暴力。純粋と凶悪。赦しと拒絶。
1曲め「救世なき巣」の不穏だけど静かなノイズに息を潜めていたら、続く「Sturm und Drang」であーーー大変!!狂気と悪意の渦にずるずると引っ張られてゆく。「Blood Music, 1985」も破壊衝動ゴッリゴリで堪らん。「tu m’ (Parallel Ver.)」夢の中のような靄がかった夜の灯火に一旦落ち着き、表題曲「Rapsody in beauty」はサイレンの鳴り響くなか桃源郷へ逃避行のような甘い気だるさ。再び「236745891」から轟音世界へと戻ってゆくのだが、ラスト2曲「Romancé」「僕らはなんだったんだろう」で、救われるような木漏れ日の中で物語は終焉を迎える。
どのアルバムよりも確立され表現されたTHE NOVEMBERSの世界。鉄や鋼のように強硬で、綿毛のように柔らかすぎて触れられなさそうな、圧倒的に美しくて恐ろしいこの世界の正体はなんなのだろう。理解のできない美ほど恐ろしいものはない。それが嫌だけど何故か知りたくって、覆った指の隙間から目を覗かせてしまう。


8位/Cocco『プランC』
プランC(通常盤)

先行公開された「パンダにバナナ」を一聴してニヤリとしたとともに、あっちゃんが帰ってきたと確信した。この曲はあまりに直接的な淫らな歌詞なのに、サウンドのダンス×遊び具合が最高で、もはや清々しいまでの気持ちにさせてくれる。
彼女は「焼け野が原」「水鏡」のような情念、それも怨念じみた情念の曲がパブリックイメージになっていると思うが、この『プランC』にはいまのCoccoの「生への肯定」が詰まっている。つまり楽しいのだ。驚くほどに歌声が気持ちよく伸びて、優雅にバレエのステップを踏んでいるCoccoが容易に想像できる。でも、そうかとおもえば裸足でマイク1本、ステージで声を上げている姿も想像できる。自身の振り幅を最大限利用している。つまり、これは彼女の最新の姿がそのままパックされている。やるしかないんだったら徹底的にやるわよ、となんでもぶち込んだ闇鍋のような作品。それがとてもいい味を出していて、まだまだ生きてやる、そう聴こえてニヤつかずにはいられない。「BEAUTIFUL DAYS」は白眉。


7位/ふくろうず「マジックモーメント」
マジックモーメント(初回生産限定盤)(DVD付) 

夏にリリースされてからずっと聴いたけれど、夏に聴くのがとっても気持ちよかったこのアルバム。うだる暑さの中でこれを聴くと、内田万里の伸びやかな声が脳天に直接響いてきた。いつもは捻くれてどこか寂しさのある彼女らの作品にしては、今作はとっても明るく突き抜けていて、それが逆に子役の笑顔を思い浮かべてしまって、可愛いのにせつなくてかなしい。
キラキラシンセポップな「GINGA GO」「ディスティニー」、わかりたいわかってあげたい君の歌「ユアソング」、へんてこな「テレビジョン」、自然に体が動き口ずさんでしまう「イージーカム・イージーゴー」、ふくろうず節ともいえる切なさとのハーモニーが奏でられる「ベッドタウン」。バラエティ豊かなのに統一されていて、一瞬で終わってしまう。1曲1曲にも『マジックモーメント』が宿っているし、アルバムとして聴いたときにもキラキラと彩られた『マジックモーメント』を体験できる素敵なアルバム。


6位/THE ORAL CIGARETTES『The BKW Show!!』
The BKW Show!! 【初回限定盤】(CD+DVD)

奈良出身の4人組ロックバンド。爆進攻めモードONの「BKW=番狂せ」ショー。
四つ打ちを多用するバンドが目立つ中、それだけではない独特の器用なリズム、一本調子にならない大展開、超テクニカルな楽器陣、そして歌謡的メロディアスで艶のある歌とドラマティックな歌詞。キラーチューンや高速ロックから、やさしくさびしいミディアムナンバーを挟み、ラストを飾るバラード「透明な雨宿り」には叙情性、文学性すら感じる。まるで周りを蹴落とす時期を虎視眈々と見計らっているような、隠しきれない狂気・野心・闘争本能が、全体を通してびんびん伝わってくる。貪欲さが力となり武器となり、きちんと音楽に昇華されている。「起死回生STORY」やフェスでの「大魔王参上」のイメージは陽気な関西人の兄ちゃんという感じだったのに、アルバムを通したイメージは意外と暗くて内省的で捻くれていて妄想癖があるナイーヴな青年。ねえ、そういうのどストライクに決まってるよ?今年メジャーデビューしたバンド界隈では、頭一つ二つ抜けてオーラルが好きです。かっこいい。


5位/テゴマス『テゴマスの青春』
テゴマスの青春(通常盤)

タイトルは『テゴマスの青春』だが、描かれるのはいまここの青春ではなく、過ぎ去った青春を回想しながら追体験しているような、アラサーならではのどこかすこし他人行儀な青春が味わえる。甘酸っぱさと苦味の両方を経験したあとの青春。
さすがMUSIC FAIRなどフジテレビ音組の常連、ジャニーズ離れした歌の実力が遺憾なく発揮された会心の出来となる作品である。何をおいてもまず曲が素晴らしい。桜並木を笑顔で駆け出したくなるような「ハルメキ」、歌声の端々から哀愁が感じられる「ファンタジア」、育ちの良い色香のような魅力が漏れまくっている「innocence」、青春の思い出すべてを切なく照らし抱擁する名曲「ヒカリ」、アコギ一本に極上のハーモニーがとにかく美しい「きれいごと」、増田貴久のどう考えても天才としか思えない(超褒めてる)歌詞ワールドと手越祐也のやんちゃかわいい作曲センスが同居する「月の友達」などなど。どれがシングルになってもおかしくないほどクオリティの高い数々の曲が、完璧なバランスで共存している。どの曲のアレンジに関しても無駄も隙もなく、上質なポップアルバムとしてTPOを選ばず老若男女が聴ける本当に素敵なアルバム。歌を聴いていて楽しいと素直に思える仕上がり。


4位/YUKI『FLY』
FLY(初回生産限定盤)(DVD付)

いつからかYUKIから離れてしまった人にこそ改めて聴いて欲しい、成熟した”YUKIちゃん"の肖像。
長らく続いていたYUKIのフォークブームは少し影を潜め、スロウでメロウな方向のダンスミュージックに舵を切った今作は、根底に流れるスピリットが『joy』や『Wave』に近いと感じる。菅野よう子作詞作曲編曲の「坂道のメロディ」の髄まで流れる神聖なまでの純粋なポップネス精神はYUKI史上でも最高。さらに「誰でもロンリー」「はみだせラインダンスから」という曲名からは、『commune』で私たちを胸に抱き寄せ泣き止むのを待ってくれていたようなぬくもりと、なーにめそめそしてるのよ!と笑いながらケツを叩いて送り出してくれるような頼もしさを同時に思い出す。それって、もしかして女性の標準装備とされている母性の表れではないだろうか(ここでいう母性とは、対象がいかなる状態であっても相手を受け入れる精神性のこと)(母性イコール母ちゃん、天使イコールロリータという図式はここには存在しない)。
私たちの前に出てくるとき、YUKIはいつも笑顔だ。笑顔とは対象がいて初めて発揮されるものだと思う。そして母性もそういうものだと思う。YUKIが笑顔を向けるとき、わたしはそこに母性を感じずにはいられない。ふわふわとしたぬくもりを纏いながら、求められるものをすべて引き受ける覚悟がみえるからだ。そしてわたしには、そんなYUKIこそが尊いものの象徴に思えるのだ。だからYUKIちゃんは天使。これからもずっと。


3位/cinema staff『Drums, Bass, 2 (to) Guitars』
Drums,Bass,2(to)Guitars (通常盤)

予兆はあった。それがついに化けた。
このバンドの特筆すべき長所はVo.飯田瑞規の伸びやかで美しい歌声と、それを十二分に活かした心地よさ満点のメロディー。そしてボーカルを優しく包み込む静けさと軽やかさと轟音を絶妙なバランスで奏でる楽器隊だと思う。以前からその特長は散見することができたのだが、この作品がとくに素晴らしいのは、シネマの持つ気持ちいいメロディーの豊かさと、静と動のメリハリを極めたところではないか。「tokyo surf」にみる笑顔の浮かぶようなポップセンス、「borka」の全体的な耳心地の良さ、「shiranai hito」の轟音激情エモ、「fiery」の静謐さから展開される凄まじい爆発。それらが見事に調和し溶け合うアルバムの流れがたまらなくて、ラスト「great escape」のあとに必ずリピートボタンを押してしまう名盤。


2位/MONO『The Last Dawn』
The Last Dawn

アメリカを始めとした世界で人気を獲得している日本人スリーピース・インストゥルメンタルバンド。それ以外、MONOのことは知らない。最初に手に取ったきっかけはレンタルCD屋さんのポストロックコーナーで「MONOの世界観に浸れ!」的なPOPに何故か興味を奪われ『Gone』を借りたから。些細なことだけど、それがすべてで、素晴らしかった。
今作は『Rays of Darkness』『The Last Dawn』の2枚同時リリースのひとつ。闇と光として対になった作品の、光の側面である。CINRA.netで初めて読んだインタビューによると、闇を描こうとして『Rays of Darkness』を制作している際、ご本人まで闇に行ってしまった。そこからタイアップの話を得て徐々に這い上がる様子も制作に生かしたいということで曲に残しこのアルバムにまとめたそう。わたしもなんだか歳をとったのか、長らく暮らしていた闇よりも、光のほうが染み入るようになってきてしまった。たぶん死ぬまで聴くと思う。
 

1位/BUMP OF CHICKEN『RAY』
RAY(通常盤)(予約特典ステッカー無し)

リリース時から今年の不動の1位。「ray」についてはこちら(43位)で散々語ったので、べつのことを。平坦な語り口のようなメロディーラインが特徴だったバンプの曲だが、このアルバムは、まるで藤原基央がJ-POPメロディーメイカーとしての素質に目覚めたかのごとく、起伏に富んだメロディーの宝庫になっている。というかアルバム曲の存在が元気すぎて、シンプルな印象が強かったシングル曲たちも、逆にキャラクターが立っているような感覚に陥る。つまり全曲捨て曲なし。全体を通しても、これまでのアルバム作品の中で最も生命が躍動している。「ray」以外にとくに好きなのは「morning glow」。比較的いつものバンプ節に近くて、歌詞を読んでいると「ray」という曲が生まれた時の舞台裏の葛藤なんじゃないかと思わせられる。やっぱりすこしは今や過去に未練もあるし、やっぱりすこしも忘れたくない。だけど、そっちを選んだわけだから万感の思いで手を振る。ああでもやっぱり「firefly」の歌詞と歌い方も強くて好きだ。
かつてはひとりで背負いきれない十字架を、無理やりひとりで背負い、守り抜いて生きていくことを信念にしていた彼の新たな決意。悩みも痛みも忘却も、開き直りとさえ見える明るさも、すべて人生の一部とひっくるめて受け入れた青年の、あるひとつの到達点に力強く建てられた記念碑。



▼2014年購入した洋楽5枚

『The 1975』The 1975
『The Next Day』David Bowie
『Ultraviolence』LANA DEL REY
『Bankrupt!』Phoenix
『The Balcony』Catfish and the Bottleman

来年は洋楽もきちんと追いかけたいぞーという事を含めて残しておきます。


他にも入れたいアルバムはいっぱいあったけれど、泣く泣く10枚に絞りました。とはいえ自分の傾向としては、100%ハッピーな音楽はライブでは楽しめても、100%好きにはなれないみたい。こんなところで根暗が極まれる。でも他人に理解してほしいと思ってない音楽も苦手だったりする。適度に湿っていて適度に人間味のある音楽が好きなのだけど、やっぱりちゃんと聴いてみないとわからない。だからこそ色々聴いてみるし、ストライクな音楽に出会えたときは幸せ。
毎年たくさん得ては削る。そうして少しずつ感覚がブラッシュアップされている、といえるのかどうかはわかりませんが、来年も素敵な音楽にたくさん巡り会えますように。
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「お前の魅力はなんだ?」


ジャニーズのアイドル。
イコール、かつては歌って踊る甘いマスクの持ち主だった。いまはそれだけに留まらず、SMAPがバラエティの扉を開き、中居正広が司会者の扉を開き、TOKIOが肉体派と農家の扉を開き、櫻井翔がラップと報道キャスターの扉を開き、大野智が芸術作品個展の扉を開き、岡田准一が大河ドラマ主演の扉を開いてきた。小説家の扉を開いたのは加藤シゲアキ(NEWS)だった。

先人たちの扉を開くモチベーションは、生き残る居場所を得るためのサバイバル合戦だったり、勝ち取ったステップアップだったり、「ジャニーズ」だからって男になめられたくない、などそれぞれに様々な想いがあるのだろう。加藤さん曰く「自分がなにか動くことで、NEWSの活動に還元したい」その祈りにも似た強い想いが、彼を小説家たらしめた。その祈りは一度崩壊した後に、再び、より頑丈に構築された。

加藤さんを構成する要素には、明らかにされているだけでも、ひとりっこ/ジャニーズ/職業がアイドル/NEWSのメンバー/小説家/しゃがれ声/中学受験/青山学院大学卒/ラジオ/タマフル/雑誌連載/音楽/映画/美術/写真/料理/梅干し/釣り/金魚/カラオケ、などがある。とにかく多趣味。
今回この記事を書くにあたって、音楽だいすきクラブという合同ブログでアイドル特集があり、そちらに加藤さんの小説「閃光スクランブル」をきっかけにNEWSにはまったことを書きました。こちらはその関連記事という位置づけ。むしろ加藤さんがサブカル趣味の人に見つかって欲しいという思いだけの記事。ここでは大きく2つ、彼の小説と彼の好きな音楽について取り上げる。

加藤シゲアキを一言で表すなら、負けを知ってるこじらせアイドル。ほんっと最高。



★初稿時(2014/12/23)より情報等の加筆・修正を行いました(2015/08/20)




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【12/12】2回め観てきました。
前の記事に追記してもよかったのだけど、やたら長くなってしまったので別記事に分けました。

初回の感想はこちら。監督目線で見ました。
ラルク映画「Over the L'Arc-en-Ciel」感想。


後出しは嫌いだけど、この際だからはっきりと素直に告白する。最初に観たとき、この映画からラルクについて何も感じられなかったことを。
泣いたり怖がったり悪態ついたりもやもやしたり出来なければ、わからないもないし「ラルクを好きになってよかった」すら思わなかった。感想が完全に無だった。それは、わたしにとって、この映画はそれだけ監督の色が濃かったということだと思う。

学生時代、超ざっくりといえばファンタジーよりもドキュメンタリーをつくる側だったこともあって(とはいえ映像ではないので映像作法とかは門外漢)、ドキュメンタリーを見るときは「被写体」をどう受け取るか、よりも、「監督」がどう映し出したいのか、のほうに目がいく。被写体が自分の愛するものであればあるほど、監督側の意思を汲みながら見なくてはその作品を通して被写体がどう描かれたのか理解したことにならない=それでは批評なんてできない、と客観的に見るべく自身の感情に対し自制心が働く。もちろんいちばん良いのは被写体と監督が相互理解の元で被写体の本質に深く迫ったものだけど、今回は最初からそうでないものであることは「歴史に迫る」「いままでとこれからを紐解く」等のキーワードではなく、「ワールドツアー密着」という触れ込みの時点で明白だった。インタビュー主体ではない、これまでの歴史を総括し映像に残したいわけではない、記念すべき初のワールドツアーだけれどそれらを記念公演にするつもりはない(tetsuya談)、つまりL’Arc-en-Cielという長い人生のほんの一瞬を切り撮った映像にすぎないということが暗に提示されているとすでに読み取れたからだ。
だから、それを軽々しく「ラルクのドキュメンタリー」という茫漠とした言葉を使ったことが、ファンとの齟齬の始まりだったのではないだろうか。まあ間違いではないけど、それこそ「ワールドツアーを通して僕が伝えたくなったラルクのスピリット」とかそういう感じにすればわかりやすかったのではないかな…笑
監督の描き出したい意図は伝わってきたし、その時点で監督の作りたいドキュメンタリー作品としては成功したといえる。それ以外にとくに感じることはなかったが監督の意図は汲むことができたから、初回の感想はああいうふうになった。

そして、初回の感想を書いた後に、それではこの作品は「被写体」=ラルクにとってどのような位置付けなのか、ということをわたしは見ることができていないことに気付いた。何も感じられなかったことが感想だとしても、ラルクにとってどのような作品になったのかということは考えなくてはならない。考えずにはいられない。それを念頭に置いて2回めに臨んだ。




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